大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台家庭裁判所 昭和31年(家)591号 審判

申立人 中山みよ子(仮名)

右法定代理人親権者実母 角田和代(仮名)

相手方 中山一雄(仮名)

参加人 松木みの(仮名)

主文

(一)  申立法定代理人和代、相手方一雄及参加人みのは協力して申立人みよ子を扶養すること。

(二)  申立法定代理人和代、相手方一雄及参加人みのは、申立人みよ子の養育費を左のとおり分担し、昭和三十一年五月以降毎月末日限り申立人を現に養育している佐田まさ子宛に送金又は持参して支払うこと。

(1)  申立法定代理人和代は毎月金二千円

(2)  相手方一雄は毎月金千五百円

(3)  参加人みよは毎月金五百円

理由

申立法定代理人は、相手方は申立人を扶養すること、相手方は申立人の養育費として毎月金二千円を支払うこととの審判を求め、その申立の実情として、申立法定代理人と相手方とは昭和二十九年五月申立人みよ子の親権者を実母である申立法定代理人と定め調停離婚し、その後申立人は昭和二十九年八月森田正治同人妻ヨシと養子縁組成立し森田夫妻は実子のように誠意をもつて育ててくれたが、申立人は病弱で昭和三十年一月末仙台の大学病院で脳性小児マヒと診断されたため、森田氏夫妻としては老後をみてもらうつもりで養子縁組をしたのであるから引き取つて欲しいとの話なので昭和三十年三月二日引き取つた。しかし、申立法定代理人の父英夫が申立人みよ子を家におくことは反対であつたため、以前申立法定代理人の松木家に長年手伝をしていたことのある名取郡○○町○○村○○○○の佐田まさ子に保育を頼み月々養育料四千円(右英夫が出していた)と季節の変り目には衣類を送り現在に至つている。申立法定代理人は、昭和三十年六月角田明と結婚した。昭和三十一年一月○○日英夫は○○○のため死亡し、前記月々の養育料を出すことに家計上困難となつた。申立法定代理人及その現在の夫明の資力収入状態では、前記養育料の支払の余裕もない。そこで相手方に対し同人が申立人の実父として有する申立人に対する扶養義務にもとずき養育料の折半負担を求めるため本申立に及んだ次第であると述べた。

相手方は、申立人みよ子が相手方と申立法定代理人和代との間に生れた子であることは認めるが、調停離婚当時、申立法定代理人は申立人みよ子の親権者となつて監護養育にあたると主張してみよ子を引き取つたのであり、爾後みよ子の養育上の経緯については全然自分は関与していないのであるから、申立法定代理人の主張する如き養育費の折半負担には応じられない。しかし、みよ子の父として毎月金千円程度ならば負担してもよいと述べた。

当裁判所は、職権をもつて、申立法定代理人の実母であり申立人の祖母である松木みのに参加を命じた。

よつて按ずるに、申立法定代理人、相手方及参加人各審問の結果と家庭裁判所調査官補金野宏一の調査の結果を綜合し、相手方一雄の戸籍謄本の記載を参照すれば

(一)  申立人みよ子は、昭和二十八年十二月○○日申立法定代理人和代と相手方一雄との間に出生したが、昭和二十九年五月○○日申立法定代理人と相手方が調停離婚し、申立人の親権者及監護義務者を申立法定代理人と定められたが、昭和二十九年八月森田正治同人妻ヨシと養子縁組成立し森田夫妻に養育されることになつたが申立人が病弱のため協議離縁となり、昭和三十年三月申立法定代理人の実家である松木家で引き取つたが、申立法定代理人の父英夫が申立人を家におくことを反対した等の理由によつて、以前松木家に長年手伝をしておつた、名取郡○○町○○村○○○○の佐田まさ子宅に保育を託され、爾来今日に至るまで右佐田まさ子宅で養育されている事実

(二)  参加人みのは、申立法定代理人の実母であり、申立人の祖母であるが、前示のように、申立人を佐田まさ子宅にあずけるにあたり、その交渉にあたり、右まさ子との間に養育費として毎月四千円宛支払うことを取りきめ、爾来、本年一月二十九日、みのの夫英夫が死亡するまでは英夫とともに右養育費を負担し、又現在でも、申立人の養育上のことについては、まさ子宅と交渉にあたつている事実及右みのは現在下宿業を営み下宿料と家賃とあわせ毎月八千円程度の収入を有する事実

(三)  申立人和代は、昭和二十九年五月○○日相手方一雄と調停離婚後、昭和三十年六月○○日魚田明と結婚し同年七月十二日届出を了し、前記英夫死亡後は申立人みよ子の養育費を負担し参加人みのを通じて前記まさ子宅に支払つている事実及現在の収入としては○○○学園高等学校教諭として月収九千三百七十五円程度であり、夫の明は○○気象台○○技官として月収九千八百円程度である事実

(四)  相手方一雄は、昭和二十九年五月○○日、申立法定代理人和代と調停離婚後、申立人みよ子が前示の如く養子縁組したり離縁したり、又佐田まさ子宅に保育を依頼されたりした経緯については全然相談にあずかつて居らず本年二月養育費の件につき交渉を受けて初めてその経緯を知つた事実及現在○○学院高等学校教諭として月収一万三千四百円程度で家族は養母とくと二人暮しである事実

を認めることができる。

右事実に照らせば、申立法定代理人は親権者実母として、相手方は実父として、参加人は祖母として、当然申立人に対する扶養義務ありといわねばならない。

申立法定代理人は相手方に対し申立人の養育料金四千円を折半しその半額である毎月金二千円の支払を求めており、相手方は毎月金千円程度なら支払つてもよいがそれ以上の額の支払には応じられない旨述べているので、この点について判断するのに、前示認定事実の如く、相手方は申立法定代理人と調停離婚後申立人の養育上のことについては全然関与せず殊に申立人を佐田まさ子宅にあずけ養育料を毎月四千円と定めた衝にあたつたのは参加人みのであつて相手方一雄は全然関知しないところである等の点と、相手方の現在における資力収入状況等を参酌すれば、相手方に全養育料の折半負担を求めることは少しく酷に過ぎるといわねばならない。

しかし、申立法定代理人も既に再婚し、申立人の養育費支払にはかなり窮している事情もあるし、相手方も、現在もなお父親として申立人みよ子に対し愛情をもつているようでもあるから、それらの諸事情を綜合して考えるとき、相手方は申立人の養育費として毎月金千五百円を負担することが相当であると判断する。

しかして、前示認定の如く申立人を佐田まさ子宅にあずけ、その養育料等を取りきめたのは、参加人みのであるから同人も申立人の養育費若干を負担することが妥当であり、その負担額は、毎月金五百円が相当であると判断する。

又、申立法定代理人は、申立人の実母であり、且つ、親権者及監護義務者でもあるから、申立人の養育費の半額である毎月金二千円を負担することは当然であるといわなければならない。

よつて主文のとおり審判する。

(家事審判官 市村光一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例